「はい、はい・・・・・・勇人くん、うちに泊まってますんで。はい、あ・・・いえ、ご心配なく!はい・・・・失礼します」
彼の自宅への電話を切って、ホッと息をつく。の視線の先には、毛布に包まった年下の彼氏が寝息を立てて眠っている。
あどけない寝顔を眺めると、不思議と笑みがこぼれた。軽く頬をつついてみても、起きる様子はない。
最近の勇人くんは、どうも疲れてるみたいだ。
それなのにうちに遊びに来る。
今日だって本当は私の家にくる予定はなかったし、疲れているなら無理しちゃダメだといったにも関わらず、
突然会いにきたのだった。オマケに、この有様だ。
最初こそ、襲い掛かる睡魔と必死に戦っていたようだったが、のんびり話をしているうちに
気がついたら寝てしまっていた。勇人くんがうちで寝てしまったのは初めてだ。
相当、練習しているんだろうなぁ・・・。
野球に疎い私は、一度話を聞いたことがある。
勇人くんは練習を楽しいというのだけれど、私はそのメニューを聞いただけでも疲れてしまった。
他の高校がどのくらい練習をしているかは知らないけれど、それでもかなりの練習量なんじゃないかと思う。
規則的な呼吸を繰り返す勇人くんのすぐ傍にごろんと寝転がってみる。
勇人くんの練習着なんかも全て洗濯して干してしまったし、さっき2人でご飯を食べ終えたばかりで何もすることがない。
もちろん、食器の片づけまで終わっている。
勇人くんはうちに服や下着の替えなんかも少し置いているから、さっさとお風呂に入って着替えて貰ったし。
勇人くんに掛けた毛布を自分の方に少し手繰り寄せて、自分自身も擦り寄ってみる。
相手の肩が頬に触れるほどの距離だ。この距離が珍しいわけではないけど、こんなに傍で眠れる日が来た頃が嬉しかった。
明日は勇人くんのために、早起きをしなければならない。朝ごはんに加えて、お弁当も作ってあげたいからもっと早く?
普段自分が寝るにはまだとても早い時間だったけれど、それでも良かった。
「おやすみ、勇人くん」
はゆっくりと瞳をとじる。
*
まだ部屋が薄暗い中で、携帯のアラームが鳴った。
その音はごく僅かなもので、我ながら良く起きられたものだと思う。これも全部、愛しい彼氏のためだ。
時間を確認すると、まだ勇人くんを起こすには1時間以上の余裕があった。
何だかまだ毛布から出たくなくて、未だ眠っている彼の隣で少し体の位置を変えた。
「・・・・・・さん?」
「あ、ごめんね、起こしちゃったね?」
「いいよー・・・ぜんぜん・・・」
起きたばかりで少し低くて、掠れた声。
勇人くんはまだ温かい毛布の余韻から抜け出せないらしく、再びうとうとし始めた。
そんな相手の様子には笑みを浮かべて、彼の額にゆっくりとキスを落とした。
沈黙したしあわせの朝
「はい、勇人くん。お弁当作ってみたんだけど・・・どうかな?」
「・・・!ありがとうさん!」
(20071111)