薄いカーテンで隔たれた君と僕






小さく音を立てて、保健室の扉を開く。

後ろ手にそれを閉めるとホッと息を吐いた。



「あれ、ちゃん、どうかした?」



パッと、保健の先生が顔を向ける。

私は先生と仲が良い。だから、いつも「ちゃん」付けだ。



「おなか、痛くって」



生理痛?と聞かれて、頷く。

先生は、簡易ベッドの上に畳まれた布団を広げ始めた。



「机の上においてある、利用記録書いたら寝て良いよ。
先生は用事があるから居なくなるけど、大丈夫よね?」


「大丈夫ー」



先生は私の顔を見て、小さく笑うと直ぐに保健室を出て行った。

利用記録を書こう、と思いページを開く。私はシャーペンを持ったまま、固まった。

自分が書こうとしていた名前の欄の上に、『利央』の文字がある。


そういえばさっき見たとき、もういっこのベッドは使用中だったような・・・。

は利用記録を適当に書き終えると、席を立った。




ベッドに膝から乗ると、ギシ、と小さく音を立てる。

薄手の布団を頭まで掛けようとした寸前、ポケットに入っている携帯の存在を思い出す。

もし隣で寝ているのが利央なら、携帯が鳴るだろう。


はそう思って、利央宛にメールを打ち始めた。

利央は私が隣で寝ているなんて知らないだろうし、
携帯の音も鳴らないように設定しているから、気付かれないだろう。


送信完了!の文字が携帯に出て、は小さく笑う。

隣に居るのが利央だって確定したら、ちょっと遊んでみよう。


そんなことを考えていると、案の定、隣では携帯の音が響いた。

保健室には私たち2人以外に誰も居るはず無くて、静かなこの部屋には音が鳴り響く。

中途半端なところで音楽が途切れて、利央が携帯を手に取ったことを知った。


暫くして携帯の閉じる音がして、もうすぐメールが来るのだと予想する。

数秒後には、新着メール1件、の文字が画面に映った。

メールを開くと、簡潔な一言が目に入る。



『今授業中っすよね?』



は素早く起き上がって、仕切りのカーテンに手を掛けた。

シャッと音を立てて開いて、カーテンに背を向けて寝ていたらしい利央は驚いてこっちを向く。



「そういう君は、サボりですか?利央くん」



私が笑い声を上げると、利央は目を丸くする。

驚きのあまり、口は半開きのままだ。



「で、サボりなの?利央」


「別に・・・」



サボりじゃないっすよ、とモゴモゴ言っている。

私は利央の寝ているベッドに、ゆっくりと腰掛けた。



サンは?」


「えー、秘密ー。」



私がそう言うと、利央は拗ねたように、なんすかそれ、と言った。

ついでに(?)近くにふわふわした頭があったので、くしゃくしゃに掻き回してやった。



「やめてくださいよサン!!」



薄いカーテンで隔たれた君と僕


(20050819)


一応先輩と後輩です。言わなきゃ分からない・・・!

お題提供;ふりそそぐことば