つないだ手の冷たさに
ぎゅっと握られた手から、少しずつ温かさが伝わる。吐息が少しだけ白く残った後、すぐに消えてしまった。
つないだ手の冷たさに
手袋をしていない、制服の袖から出ている指の先が冷たかった。
両手をこすり合わせても冷たい掌からの摩擦は、あまり意味を成さない。それどころか更に冷えている気がして、
は袖に手を引っ込める。風が吹くたびに、頬に痛みが走った。
「・・・・・・寒い」
辛うじて身につけていたマフラーに、顔の半分を埋める。時間帯はあまり遅い時間ではないというのに、昇降口を出た先の風景はもう暗い。
風が吹くたびに、足元に転がっている枯葉が、滑るようにして空を舞った。
外へ一歩踏み出すと一気に冷気が体を包み込む。キン、と張り詰めた空気が、自分の体温を無常にも奪っていくのが分かった。
指がかじかむ。もう殆ど、指先の感覚はなかった。
「・・・・・?」
後方から、聞きなれない声が聞こえて振り返る。
「わ、阿部くん」
まさか、阿部くんに声を掛けられるなんて思っていなかった。
同じクラスなのにあまり話したことは無かったし。(どっちかって言うと水谷くんとよく話すし)
友達の友達が阿部くんに告白してかなりあっさり振られてしまった、という話を聞いてからは何となく敬遠してしまっていた。
「帰るの、遅くない?」
「うん、委員会の仕事が長引いたからね」
阿部君は、「あ、そう」と特に興味もなさそうに言った。(何で理由聞いたの)
足が寒い。上半身も寒い。冷たい風が吹くたびに、鳥肌が立つような感覚があった。
「その格好、見てて寒い。・・・上着は?」
「着太りするから、着ない」
「・・・・痩せ我慢」
「んな!」
痩せ我慢じゃないよ、と言おうとして止める。止める、というよりは硬直してしまったといった方が正しかった。
阿部くんがいる右側の手が、急に暖かくなって。動揺して、思わず手と阿部君の顔を見比べてしまった。
「冷たい」
「そりゃ、冷え性ですから。・・・て、違う違う!な、何で手、を・・・」
「駐輪場までだから」
阿部はぶっきらぼうにそう言うと、そのままぐいぐいとを引っ張っていった。
完全に動揺しているの心臓は、恥ずかしさで破裂寸前で、寒かったはずの体は急に熱くなる。
「、また明日」
あっという間に駐輪場に着いてしまって、阿部くんは繋いでいた手を離した。
私が自転車を止めているところから、阿部くんの自転車がある場所は離れているらしい。
落ち着け、と自分に暗示を掛けながら自転車の置いてある場所へ行くと、阿部君の姿は見えなくなってしまった。
「・・・・・・・・・・・・び、びっくりした・・・」
(20071215)
阿部の口調が分からない(・・・)